サービス工学に基づくサービスCADシステムの構築（第97報）－公共性を有するサービスの改善における意思決定支援手法

摘要

近年のサービスに対する関心の高まりを背景に，サービスを有形な製品と同様に人工物として捉え，工学的な観点より，その具体的な設計方法論を与えることを目的としたサービス工学［1］研究が開始されている．サービス工学では，領域横断的なアプローチによりサービスに関する様々な設計方法論を提案しているが，これまで公共サービスの設計方法論に関する議論は殆どなされていない．公共サービスは，その性質として非競合性及び非排除性を有し［2］，サービスの対象となる受給者の取捨選択が困難である．そのため，様々なカテゴリに属する受給者の要求を同時に満たす必要があり，特定の受給者を対象とする一般的なサービスとは異なる設計方法論が必要である．加えて，多くの公共サービスは受給者の生活に対して重要な役割を担うが，その提供価値の低さが指摘されており（例えばACSIの調査［3］），公共サービスの高付加価値化のための具体的な設計方法論の構築は危急の課題といえる．