蛍光共焦点法による工具刃先形状の機上計測に関する研究（第1報）水平面における切削液の油膜の基礎検討

摘要

工具刃先の形状は，切削加工の性能に大きな影響を与える．一般的に工具刃先形状は加工を繰り返すにつれチッピングや摩耗等により変化する．この形状変化は加工面に直接影響を与えるため，機械加工の高精度化のためには工具刃先形状を精緻に計測·評価する必要がある．これまで工具形状の計測手法として，電子顕微鏡や粗さ計を用いた手法が確立されている．しかしこれらの工作機械外での測定には，工具の再取り付け時に発生する位置決め誤差の問題があるため，高精度な評価のためには機上計測が望ましい．機上計測技術としてこれまでにAFM を応用した計測や光学手法が提案されているが，その用途は限定的で汎用性に欠ける．さらに，現状の計測手法はいずれも，加工時に工具表面に付着する切削液が測定を妨害する．そこで本研究は，工具表面に付着した切削液に蛍光を発生させ，蛍光共焦点光学系で取得することによる工具刃先形状の機上計測手法を提案する．本手法は，従来の光学測定の持つ高速性·非接触性に加え，従来技術では本来測定を妨げる切削液を表面形状の測定の信号として利用する特徴を持つため機上計測環境に適切である．また，後述する様にオーバーハング面（90°以上の傾斜面）であっても計測する事が可能なため，複雑な刃先形状が計測可能である．蛍光特性を持つ切削液の存在は数多く報告されており，本提案手法は工具刃先の機上計測技術として極めて高い実現性を持つ．