レーザ励起蛍光を用いた工具刄先形状の機上計測に関する研究（第3報）: 切削液が散乱媒質である場合の計測精度向上

摘要

切削加工にに用いられる工具の刄先に生じた摩耗や欠けは，加工精度の低下を招く主な要因である．高精度な切削加工を実現するためには，工具刄先形状の計測および管理は不可欠とされている．特に，工具を工作機械から取り外さずに行う機上計測法が必要とされているが，従来の計測法では，工具に付着した切削液が計測を妨害するため，高精度な形状計測は困難であった．そこで我々は，切削液のレーザ励起蛍光を利用した工具刄先形状計測法を提案している．先行研究では，油性切削液が付着した工具刄先形状を計測し，数マイクロメートルの精度で工具刄先形状計測が可能であることを実証した．一方，製造現場で9割程度使用されている希釈水溶性切削液を用いた計測を行う場合，計測精度が低下するという問題があった．これは，エマルション型の切削液などの散乱媒質を用いて計測を行う場合，励起光や蛍光が光吸収および散乱の影響を受けるためである．本研究は，光吸収および散乱を考慮した新たな計測原理を導入することにより，散乱媒質の切削液を用いた場合でも，高精度に計測可能な工具刄先形状計測手法を開発することを目的とする．本報告では，水溶性切削液の原液を試料とした場合の蛍光信号の減衰係数を測定することで，光吸収が蛍光検出にどのような影響を及ぼすか検証した．