ボールエンドミル加工時の工具たわみに起因する加工誤差予測－回転数の違いによる加工誤差と予測精度への影響

摘要

金型加工などに用いられるボールエンドミルは一般に剛性が低いため，たわみに起因する加工誤差が生じやすい．筆者らは，工具の動的なたわみによる加工誤差を加工前に予測し，工具経路を修正する誤差補償システムを開発している．この予測モデルは，工具を剛体と仮定して切削力を計算する剛体切削力·動たわみモデル（Rigid cutting force, dynamic deflection model）であり，短時間での計算が可能である．しかし，実際には工具のたわみは切取り厚さなどを変動させ，切削力へ影響を与える．これを考慮した予測モデルは再生切削力·動たわみモデル（Regenerative cutting force, dynamic deflection model）と呼ばれ，主に再生びびりの解析に用いられている．筆者らは，このモデルによる加工誤差予測手法も提案しているが，時間領域の解析であるため多くの計算時間を必要とする．そのため，金型加工のような大規模な工具経路全てにこのモデルを適用することは難しい．そこで，本研究では，びびりが発生しない安定条件下で再生切削力モデルの導入が必要となる範囲を検証する．本報では回転数を広範囲に変えた条件で実験を行い，予測モデルの違いによる予測精度への影響を評価した．