旋回軸運動を利用した切削点送り速度ベクトル一定化条件下での加工方法―２次元対象形状の曲率半径および曲率中心の影響

摘要

近年，金型産業において高い精度で加工を行うために，工具に加わる切削抵抗を一定化して工具の倒れ量の変化を抑制して加工精度や工具寿命を向上する研究がなされてきている．一例として，ワークの凹凸部での切削点(工具とワークが接触する点)における送り速度を変化させることで一刃当たりの送り量を一定化する手法などにより，切削抵抗の一定化を具現化したことが挙げられる．こういった研究では切削点における送り速度の大きさや切削抵抗の大きさのみを対象としており，それらの方向に関する考慮はほとhどなされていない．しかしながら，工作機械は静剛性，熱変形，動剛性ともに厳密には直交異方性を有していると考えられ，送り速度や切削抵抗の大きさが一定であっても，その方向が変化すれば加工面品質や加工精度に様々な影響が残る可能性がある．前報ではこの問題に対して5 軸制御立型マシニングセンタ(5軸MC)の回転軸と並進軸の運動を組み合わせることで，切削点での送り速度ベクトルを一定化，すなわち送り速度(ワークと工具間の相対速度)の大きさと方向の両者を同時に一定にする工具経路の選択法を提案し，その有用性を円柱を用いて検証した．そこで，本報では，円柱とさらに凹凸形状の二つを用いて新しい加工パスの可能性と問題点などを考察する．