時間遅れを考慮した環状遺伝子制御ネットワークにおける周期振動の存在条件

摘要

近年、生命現象をシステムとして理解することを目指したシステム生物学が目覚ましい発展を遂げている。その重要な研究対象として、遺伝子発現のダイナミクスが挙げられる。遺伝子発現のダイナミクスは、遺伝子制御ネットワークによって制御されており、それによりタンパク質濃度が収束や周期振動などの動的挙動を行う。さらに、この遺伝子発現のダイナミクスは、生体の様々な慨日リズムや恒常性に関係していることも示唆されている。一方、合成生物学の分野では、遺伝子制御ネットワークの周期振動性を利用して、生物振動子を人工的に合成する研究も行われている3)。したがって、生命現象を解明する上で、また生命工学へ応用する上でも、遺伝子制御ネットワークの研究は非常に重要である。