Xeハイドレート形成過程における生鮮野菜組織中の細胞膜の水透過性の変化

摘要

水に疎水性ガスを低温·高圧で溶解させると氷状結晶“ガスハイドレート”が形成する．ガスハイドレートの形成過程では，疎水性ガスの溶解によって水素結合ネットワークの発達した水，すなわち，“構造化した水”が生成されると考えられている．これら構造化した水、ガスハイドレートの応用的利用法として、生鮮農産物の保存が検討されている。既往の研究において、Xe雰囲気内で野菜組織を保存し、組織内の水を構造化させることで、その品質保持期間が延長することが報告されている．また、より長期の保存を目指し、ガスハイドレート自体を利用する試みもなされている。近年、その基礎としてタマネギ組織におけるXeハイドレート形成が、NMR測定やX線回折測定によって確認された。そして、タマネギ組織の様な細胞構造を持った組織においてもガスハイドレートは形成し、付加圧力や保存時間に伴い、その形成量が調節できることが確認された．しかし，ガスハイドレートの形成によって、組織がどのように変化するかについてはほとhど報告されていない。特に、ガスハイドレート形成および成長過程における組織への影響を報告はなされていない。そこで本研究では，農産物に対するクラスレート水和物の形成·成長による影響を観察することを目的とした。NMRを用いた拡散係数の測定より制限拡散現象を観察することで、組織中の細胞膜に対する影響を観察した。