HiPIMS法を用いたDLC成膜におけるピーク電力密度に及ぼすパルス条件の影響

摘要

近年では高齢化社会が加速し，加齢によって失われた歯を取り戻すための手段として歯科インプラントの需要が増している．しかし，アパタイト等の既存の表面処理は剥離し易く骨吸収を伴うオッセオインテグレーションの喪失やインプラント周囲炎の問題がある。そのため，生体適合性のある高硬度で密着性の高い表面改質技術が求められている．DLC（Diamond-Like Carbon）コーティングは医療用材料として広く認知されており1），問題解決に向けて適用の期待が大きいが，これらの高い材料特性を満足する成膜方法は未だ確立されていない。そこで本研究では，歯科インプラント用の表面改質法として，HiPIMS（High－Power Impulse Magnetron Sputtering）法を用いた成膜技術の開発を目的とする．これにより，高硬度　高密着力, 高生体適合性の医療用DLCコーティングの実用化を目指している。本研究で用いるHiPIMS法はノパルス幅200μs以下のduty比10％以下で，電力密度500W/cm~2以上の高い電力を瞬間的にターゲットに投入しク電子密度を高めることでイオン化率を向上させ高密度プラズマを生成することが可能となるため2），高硬度で耐久性の高い医療用のDLC成膜が期待できる．