三次元弾性薄膜から巻き上がる渦の干渉とその非定常流体力

摘要

代表的非定常流れの一つである運動体まわりの流れ場に関する研究は，近年，数多く報告されている．最近では，二次元運動体だけに限らず，三次元運動体を対象にした研究も実験·数値解析により進められている．Joelらは，ピッチング運動やヒービング運動を行う三次元運動体まわりの流れ場は，ストロハル数によっておおまかな後流構造が一致し，運動に依存しないことを明らかにしている．また，Gordnierらは，羽ばたき運動体の打ち上げ·打ち下ろし時の相対迎角が推進力に強く寄与することを明らかにしている．その一方で，運動だけでなく，弾性の効果に関する研究も進められている．Heathcoteらは，スパン方向のみの弾性変形でも適度な弾性変形であれば推進効率が向上することを示している．しかしながら，これらの多くは，運動体のアスペクト比が2を超えたものである．蝶の翅のように，運動体のアスペクト比が小さい場合には，翼端と前縁から巻き上がる渦の干渉が強くなるため，その渦の干渉によって形成される渦が重要な役割を果たすことが予想されるが，そのような流れ場の詳細は明らかにされていない．また，弾性を考慮したこれらの流れ場に対しても明らかにされていない．本研究では，アスペクト比が小さい運動体を対象に，三次元弾性薄膜により形成される渦構造とその非定常流体力を明らかにすることを目的とする．具体的には，ANSYS/ANSYS-CFXを用いた数値解析により，薄膜の前縁と端から巻き上がる渦の干渉とその発達過程，さらには，その渦構造と非定常流体力特性の関連付けを行うことを目的とする．