イオンマイグレーションの発生に及ぼす火山灰の可溶性成分の影響

摘要

日本は，110の活火山がある世界有数の火山大国である．2015年だけでも，阿蘇山，口永良部島，箱根山，西之島，浅間山，桜島と多くの火山が噴火した．爆発的な噴火が起きると，火山灰は成層圏にまで達し，世界中に広がることが懸念される．広範囲に降灰する火山灰は微小であることから，あらゆる精密電子機器にこれらが入り込む．この結果，静電気に起因して火山灰が付着し，機器が故障を引き起こすことが懸念される．特に，電子基板の絶縁信頼性を損なう問題として近年顕在化し始めたイオンマイグレーション（以下IM)には注意を要する．IMとは，直流電界下において電気化学反応により，一方の金属導線から他方の金属導線に向かって金属イオンが移動·析出し，絶縁物上に短絡回路を形成する現象である．火山灰付着によるIMの発生·進展挙動に関するこれまでの研究により，火山灰自体は短絡回路形成に寄与しないが，火山灰の可溶性成分，特に(SO_4)~(2-)によりIM の発生·進展が加速する可能性が示唆された．そこで本研究では，IMの発生·進展挙動に対する(SO_4)~(2-)の影響を明らかにするため，(SO_4)~(2-)濃度およびpHに着目したのでその報告する．