みhなで取リ組むイノベーション (集団ひらめき学：ワイガヤでイノベーション)

摘要

グローバリゼーションの勢いは，地球規模のマーケットでの厳しい競争時代を産み出し，魅力的な価値ある製品を提供することが死活問題とされる時代を迎えている.これまでに日本企業は，ウォークマンやスパーカブなど，社会生活を変革する工業製品を創造（イノベーション）してきたことは有名である.しかしながら少子高齢化が進み，労働人口の減少問題を抱える現代の日本において，SONYやHONDAが創造してきたような魅力製品の開発を実現化する創造力の涵養は重要課題となっている.このような社会的ニーズが高まる中で，デザイン·シンキング（Design Thinking/デザイン思考）が話題になって久しい.次々と啓蒙書が出版され，多くのワークショップが企画開催し，デザイン·シンキングのファシリテータが活躍している.企業の中では，デザイン·シンキングを推進するチームが編成され，実践する場（Innovation Studioなど）やサポートスタッフの整備が精力的に進められている.日本機械学会の設計工学·システム部門に設置された「"ひらめきを具現化するSystems Design"研究会」は，HONDAが実際の研究開発の現場で数々のヒット商品を生み出してきたワイガヤに着目し，イノべーションを実現する集団による創造手法の体系化を目的に研究会活動を進めている.この背景には，デザイン·シンキングはワイガヤと関係が深く，様々な側面で関連した手法であるとの仮説が存在している.本稿は，この研究会活動において議論された内容を整理，報告するものであり，特に，吉川らが提唱した一般設計学における設計の体系を参照しながら，ワイガヤの体系的理解を試みる.