繰返し引張外力によるねじのゆるみ理論に関する評価（接触面における摩擦力の影響）

摘要

代表的な機械要素の一つであるねじは，結合·分解が容易であり，比較的大きな締結力が簡単に得られるという特性があり，また今日では精度の高いねじを安価で大量に生産できることから輸送機器や家電機器，建造物など身の回りで広く用いられている．しかし，ねじの使用増加に伴い，ねじに関する事故も増えており，中には人命を奪う程の重大な事故もある．ねじのトラブルで最も多いのはゆるみによる部品の脱落であり，その機構の解明のためにこれまで多くの研究が行われてきた．その中で，ボルト·ナット締結体に繰返し軸方向外力が作用すると，外力によるボルト·ナットの半径方向の膨張·収縮変形に伴いねじ面ですべりが生じ，これによりボルト軸にねじりモーメントが発生し，ボルト·ナットが相対的に回転することでゆるみが進行すると言われている．しかし，従来のゆるみ理論では接触面における摩擦力の大きさやその作用方向についての検討が十分にはなされておらず，また過去の三次元FE解析を用いたシミュレーションでは，軸方向外力を除荷する際のねじりモーメントの変化について実験の再現が十分にされていないなど課題が残されている．そこで本研究では，解析における接触検出方法の違い及び接触面における摩擦係数の挙動に着目し，三次元FE解析結果を実験結果と比較することによって，実際の接触面での挙動を推測しようとしている．