インライン式小型ハイドロタービンの安定運転に向けた研究開発

摘要

近年，化石燃料使用による地球温暖化に対する懸念の高まりから，半永久的に利用できる再生可能エネルギーへの移行が期待されている．小水力発電は新エネルギーとして位置づけられており，その賦存エネルギー量は極めて大きい．小水力発電の中でも出力が100kW-1000kW程度の比較的大きな設備は採算性が良いため普及しているが水車を設置する土台や導水管などにより自然環境への負荷も大きい．一方，農業用水や小規模な河川などでは，ピコ水力と呼ばれる100W-1kW程度の発電が可能な箇所が多数存在し，環境への負荷が小さい水車に対する期待も大きい．しかし，小規模な水車では，比較的大きな水車に比べて効率が低く，異物混入により運転不能に陥ることがあることが課題となっている．そのため，高効率かつ安定運転であることが求められている．そこで，本研究では小型ハイドロタービンに高性能化が期待できる二重反転形小型羽根車の採用を検討する．これまでの現地調査により設置想定箇所では異物が流入することが明らかとなった．これらの異物は羽根車に付着することで性能を低下させ，運転不能などの問題を起こす可能性がある．そこで，本報では植物性異物が小型ハイドロタービンの性能と安定運転に及ぼす影響を明らかにするために，植物性異物付着時の性能試験を行うと共に，異物可視化実験を実施し，その結果を報告する．そして，異物通過性の向上と安定運転に向けた指針を検討する．