筋リラクゼーションと関節可動域を両立する手指関節拘縮予防リハビリシステムの開発

摘要

事故による怪我や，脳卒中などの病気によって体の一部もしくは全体が麻痺を起すことがある．麻痺が起きるとその部位を動かすことは困難となり，この状態を長時間放置していると，関節に拘縮が起きる．拘縮とは，皮膚や皮下組織，骨格筋，腱，人体，関節包などといった関節周囲に存在する軟部組織が器質的に変化したことに由来した関節可動域制限である．例えば，手指関節や足関節に拘縮が起きると，物の把持や歩行が困難になり，日常生活に支障が出る．また実際の臨床では，4週間以内の短期間の不動でも拘縮の発生が著しいケースがある．拘縮が重症化すると，元の正常な関節状態に復帰するためのリハビリに多くの時間が必要となるだけでなく，激しい痛みが伴うため，患者の精神的かつ肉体的な負担は非常に大きい．そのため，拘縮が発症する前にリハビリを行うことによって拘縮を予防することが重要となる．通常，このリハビリは作業療法士や理学療法士が，緊張している筋肉や，むくみが生じている部位をほぐし（ここではこれを筋リラクゼーションと呼ぶ），その後関節可動域（以下，ROMとする）運動を行う．筋リラクゼーションで血流を良くし，むくみを除くことで，狭まっていた関節の可動域が広がり，ROM運動の効果を高めることができる．一方，近年の高齢者人口の増加により，患者数に対する作業療法士や理学療法士の不足がますます深刻となり，その結果，これら医療従事者の負担が大きくなるといった問題が懸念されている．このような背景から，ROMの改善を行うリハビリ装置の研究開発が盛hに行われている．