EHL 膜の蛍光観察とスペクトル測定

摘要

弾性流体潤滑（EHL）では，高い接触圧力による表面の弾性変形と潤滑油の粘度上昇が影響し，2 面間に油膜が形成される．このとき，膜内の油は高接触圧力と高せh断の作用により，固化，粘弾性を示すと考えられている．これまでに，膜内の油の状態は，静的条件における状態図や粘度特性を基に検討されており，各運転条件における油の状態評価等が行われてきた．一方で，転がり，すべり運動下における動的条件下での油の状態に関する測定は行われておらず，実際の潤滑状態を詳細に理解する上では重要な課題として考えられる．本研究では, 油膜の蛍光観察により，膜内の油の状態を検討することを目的とした．蛍光法を利用した EHL 観察はこれまでに行われており，蛍光強度の変化から潤滑膜の厚さを測定すること等が報告されている．また，著者らは，膜内の蛍光スペクトルの変化から，油の状態が評価できることを閉じ込め膜の観察結果を基に提案してきた．本研究では，EHL 膜の蛍光観察の基礎的実験として，冷却時の蛍光スペクトルの変化，および転がり運転時の油膜観察を行った．得られた結果を基に，油の状態と蛍光の関係，および油膜観察への応用に関して検討を行った．