鉄分を含む水溶液のラジオリシスによる過酸化水素発生量の評価

摘要

福島第一原子力発電所（1F）の廃炉作業の安全な実施及び放射性物質の閉じ込めのためには，建屋内の構造物の腐食量の把握が重要である．建屋内は数Gy h~（-1）の放射線環境となっており，腐食量の把握にはラジオリシスにより生成する酸化剤（H_2O_2，O_2）の寄与を考慮する必要がある．我々はこれまで構造材料由来の鉄分の存在に着目し，鉄イオンFe~（2+））を含む水溶液のラジオリシス計算やガンマ線照射実験を行ってきた．これまでの実験では，H_2O_2とヨウ素（I_2）との反応を利用した測定法（以下、ヨウ素法）によりH_2O_2の生成濃度を測定していたが、実験結果がラジオリシス計算結果より数倍高く見積もられた．その後，計算及び実験条件の見直しを進めたところ，ヨウ素法では，照射後試料中のFe~（3+）とI~-の反応により，H_2O_2発生量が過大評価されることが分かった．本研究では，電気化学的にH_2O_2を還元することでH_2O_2発生量を測定する手法（以下、電気化学的手法）を検討し，照射後鉄イオン水溶液への適用を行った．