高温高圧環境用水質センサの開発

摘要

我が国において，設備の腐食現象は産業災害の25～30%を占める要因となっている．そのため，災害を未然に防ぐための定期的な腐食状況の調査及び設備の交換等が必要となり，その経済的な損失を少なくするためにも，腐食状況をインラインでリアルタイムに把握することは重要であるといえる．腐食現象を決定づける要因のひとつとして，溶液のpHは大きな役割を果たしていることから，pHを測定することで間接的にその腐食の状況を推測することが可能となる．pHの測定手法として広く用いられるのが，電極間の電位差を利用した電位差測定法であり，現在様々な種類のpH電極を用いた測定が行われている．ところが，原子炉水や化学プラントのような高温高圧環境では，高温にさらされることによって電極の性質が変化したり，高圧に耐えられる構造を有していなかったりなどの問題から，従来用いられている電極を使用できないことが多い．現在，そのような溶液のpHを測定する際には，その被検液を外部に取り出してから測定する手法や熱力学的な理論計算からの予測をする手法などが用いられるが，これらは実環境におけるpHの値とは大きく異なる可能性や，設備の稼働中に測定をすることが困難であるという問題点が存在する．また，高温条件でも使用可能な参照電極を用いてのpH測定も行われているが，現在実用化されているものは，電極の寿命や製作コストといった点でリアルタイムモニタリングに適しているとは言いがたい．本研究では，高温高圧環境でのインラインリアルタイムモニタリングに適した，電位差測定法を用いた参照電極を使用しない簡易2電極pHセンサの開発を最終目的とし，種々の電極のpHに対する電位応答を様々な温度において調査した．