自己修復性塗膜開発に向けた修復性内包カプセルの合成: カプセル合成条件による構造の変化

摘要

塗装は最も広く用いられる金属防食法のひとつであるが，塗膜層に欠陥が生じるとそこから局部腐食が進行することも知られている．このため，塗装による防食効果を長期間にわたり維持するためには塗膜層に欠陥が形成したさいに，これを迅速に修復することが重要である，これの実現には高いコストが必要となる．そこで我々の研究グループでは，塗膜層に欠陥が生じたさいに，外部より処置を加えなくとも欠陥が自動的に修復される，いわゆる自己修復性塗膜の開発を行っている．この自己修復機構は次の通りである．まず，修復剤を内包したカプセルを分散させた塗膜を金属材料表面に形成する（Fig.1-a）．こうすることで塗膜層に欠陥が生じると塗膜中のカプセルも同時に破壊され（Fig.1-b），流出した修復剤により塗膜欠陥部が修復される（Fig.1-c）というものである．このような自己修復機構を考えると塗膜修復剤の内包量，すなわちこれに大きく関連すると考えられるカプセルの構造により塗膜欠陥部における修復能が大きく変化すると予想される．そこで本研究は，カプセル合成条件の最適化を目指し，シェル前駆体溶液濃度によるカプセル構造の影響について調査した結果を報告する．