溝ロール圧延で創製された超微細繊維状結晶粒組織を有する1800MPa級低合金鋼の衝撃特性

摘要

ラミネート複合材やオースフォーミング鋼の加工熱処理材では，静的および動的な破壊試験において，き裂が荷重方向とはぼ直角に分岐する層状破壊を示し，靭性が改善することが報告されている．このような靭性の向上は，層状破壊によってき裂先端が鈍化され，破壊を支配するプロセスゾーンの三軸応力状態が緩和されるためと考えられている．我々はこれまでに0.6％C-2％Si-1％Cr鋼（wt％）の焼戻マルテンサイト組織に，500°Cで減面率80％の溝ロール圧延を施したところ，〈110〉//圧延方向（RD）の加工集合組織を有する超微細繊維状フェライト（α）粒組織が形成され，引張強さが1500MPaでUノッチシャルピー吸収エネルギーの平均値が165Jと，通常の焼入れおよび焼戻し材の30Jと比べて著しく上昇することを確認した．なお，焼戻マルテンサイト組織の加工はテンプフォーミングと呼ぶ．本報告では，500°Cの焼戻しによって室温で1800MPaの引張強さが得られるように合金設計した0.4％C-2％Si-1％Cr-1％Mo鋼において，温間テンプフォーミング処理を施して得られた超微細繊維状α結晶粒組織の層状破壊と衝撃靭性の関係について調査した．