コヒーレント光照射によるスルーホール内壁の簡易検査手法の検討

摘要

家電製品などに使われているプリント配線基板のスルーホール内壁の状態によっては製品の効率が下がることや，経年劣化によって製品が故障する原因となることが知られている．スルーホールのメッキ表面にメッキこぶと呼ばれる微小な凸部が存在すると電子部品の設置不良が起こる可能性があり，メッキ表面にめっきボイドと呼ばれる微小な凹部が存在すると断線する恐れがある．また，メッキの徐々に薄くなっている部分が引き起こす断線，なだらかな凹みによる断線が問題となっている．これらの不具合を検出するための簡便かつインライン的にスルーホールを検査する方法の開発が望まれている．レーザ光が物体に入射すると後方にて回折像が生じる．このとき物体の陰影領域に生じた回折像は物体表面の3 次元形状情報を含むことを報告した．また，陰影領域回折像の光強度の垂直極大間隔から平面上の微小凸の位置を推定できることをこれまでに報告している．陰影領域回折像を活用することでスルーホール内壁に存在する微小凹凸を検出することができ，回折像の中心から同心円状に光強度分布を算出することで不良スルーホールを検出する方法を提案した．本報告では，プリント配線基板のスルーホール内壁のなだらかな凹みによる断線の検出と凹みの深さ情報の検出をモデル実験的に考察した．直接光領域と陰影領域の両方に生じる回折像を用いることでスルーホールのなだらかな凹みによる断線の検出と凹みの深さ情報を検出できると考え，特に今まで取り上げていなかった直接光領域に生じる干渉縞がなだらかな凹みによる断線の検出に有効であることを報告する．