Universal Abduction Studio の開発（第13報）―創造的設計を支援する統合計算機環境

摘要

近年，環境問題や製造者責任問題，消費者価値の多様化などを背景として，設計に対する要求の高度化·複雑化が一層進行しており，設計者は様々な問題を同時に考慮しながら設計を行う必要に迫られている．しかしながら，ある特定の領域から設計解を導出し整合性を取るような従来の設計方法では，多様な要求の高度化や複雑化に対処することは極めて困難である．また，近年のネットワーク技術等の進歩により，設計に有用と考えられる様々な設計知識が計算機上に蓄積可能となった一方で，それらは依然として有効利用されていないのが実情である．このような背景のもと，著者らは計算機上に蓄えられた分野横断的な知識の統合を実現することにより，創造的な設計の支援を行う計算機環境であるUniversal Abduction Studio[1]（以下，UAS）の開発を進めており,前報までに，UAS のプロトタイプシステムを用いた創造的な設計支援の在り方を提案している．しかしながら，これら既存のプロトタイプシステムは，設計支援を行うための各構成要素がそれぞれ独立したアプリケーションとして実装されていたため，各構成要素間の関係を理解した設計者のみが利用可能な敷居の高い計算機環境であった．本稿では，UAS を用いた知識統合を容易に実現するための新たな統合計算機環境を提案し，その具体的な実装構造を例示すると共に，本システムの利用手順を示す．