中性子捕捉療法における線量評価と熱中性子計測技術の開発

摘要

放射線療法の一つである中性子捕捉療法(Neutron Capture Therapy)は、腫瘍を細胞選択的に破壊できるため、術後の生活の質(Quality of Life)の優れた治療法として近年注目されている。中性子捕捉療法の中でも、ホウ素化合物を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT; Boron Neutron Capture Therapy)では、欧米諸国をリードする立場にある。ホウ素中性子捕捉療法は、中性子捕獲断面積の大きい核種（~(10)B)を含み、かつ、腫瘍に特異的に集まる性質のある薬剤を患者に投与し、研究用原子炉等から得られるエネルギーの低い熱中性子または熱外中性子を照射することによって核反応を誘起し、腫瘍細胞を死滅させる放射線治療法である。腫瘍細胞に選択的に取り込まれる化合物を用いることにより、細胞選択的に腫瘍を死滅させることができるため、脳腫瘍や悪性黒色腫など、正常組織内に侵潤した場合に切除が困難な腫瘍に特に有効である。