エタノールガスのためのUV-LED励起光シートを用いたバイオ蛍光式匂いカメラに関する研究

摘要

呼気や体臭などの生体ガスには、血液や尿等の体液と同様に、代謝や疾患に由来する成分（バイオマーカー）が含まれており、これらの測定·分析は非侵襲的な代謝能評価や疾病スクリーニングに役立つものと期待される。生体ガスの評価において、サンプリングにてバッチ測定するガスクロマトグラフィ法や、選択性の乏しい半導体式ガスセンサでは、生体ガスに含まれるバイオマーカーを選択的に捉え、濃度変化や空間分布を評価することは容易でない。演者らはこれまでに、酵素反応による化学発光を利用し、匂い成分を可視化するシステムを考案したが、高感度な生体ガス計測においては、センサ特性（感度、応答性）の更なる向上が求められる。匂い成分の化学発光では、2つの酵素反応を介しており、応答性や感度を損なう要因と考えられる。そこで、1つの酵素反応にてガス成分を光学情報へと変換する方法としてバイオ蛍光による可視化を検討した。本研究では、対象成分としてエタノールガスを選択し、アルコール脱水素酵素（alcohol dehydrogenase，ADH）の反応にて生成され、自家蛍光を有する還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド（reduced nicotinamide adenine dinucleotide，NADH）を高感度カメラで検出し、エタノールガスの時間的·空間的な変化を動画像として捉える「蛍光式の匂いカメラ」の構築を行った。また、飲酒後の呼気中エタノールガスの可視化に適用した。