農作物の鮮度保持を目指したプラズマ殺菌ケミストリーの解明

摘要

近年，プラズマの医療，環境，農業分野への応用が注目されている．我々は，農業分野への応用を目指して，真菌であるミドリカビ胞子を対豪として高速殺菌手法の開発と殺菌メカニズムの解明を行ってきた．ミドリカビ胞子はカンキツ類ミドリカビ病の病原菌であり，収穫後の農作物を腐敗させて深刻な被害をもたらす．プラズマからは，紫外光，ラジカル，電子，イオン，電界など様々な因子が同時に発生され，これらが相乗的に作用し殺菌効果をもたらす．基底状態の酸素原子（O（~3P）），ヒドロキシルラジカル（OH），励起状態の一重項酸素分子（O_2（~1Δ）），スーパーオキシドアニオンラジカル（O_2~-），オゾン（O_3）などの活性酸素種（reactive oxygen species，ROS）が殺菌に有効であると報告されている．効率のよい高速殺菌プラズマ源を開発するためには，プラズマから生成される活性種を同定し，殺菌効率を定量的に評価する必要がある．本稿では，基底状態の酸素原子［O（~3P）］と励起状態の一重項酸素分子[O_2（~1Δ）］の数密度を測定し，それらのミドリカビ胞子の殺菌に対する効果を評価した．