事故模擬環境に暴露した原子力発電所用安全系ケーブルの劣化状態分析

摘要

原子力発電所で使用される一部の安全系低圧ケーブルは，通常運転時の使用条件による経年劣化を経たのちに，重大事故に遭遇し，高温水蒸気と高線量率·大線量の放射線に曝された場合であっても，絶縁性能を維持することが求められるな。筆者らは，これまで，このような目的で使用されるケーブルに対し，JNESガイドのケーブル健全性評価試験の手順を参考として，熱·放射線による経年劣化及び重大事故条件を模擬する試験を行った。また，高温蒸気暴露中に絶縁抵抗を測定し，経年ケーブルの事故時環境下における絶縁性能を検証した。その結果，エチレンプロピレンジエンゴム（以下「FR-EPDM」）絶縁特殊クロロプレンゴムシースケーブル（以下「FR-EPDMケーブル」）では，ケーブル1m当たりの絶縁抵抗は，蒸気暴露前は10~(12)Ωmであるのに対し，蒸気暴露中は10~5Ωm程度まで低下することが分かった。本研究では，この絶縁抵抗低下のメカニズムを調查するため，試験後のケーブルの絶縁体に対し，全反射型フーリエ変換赤外分光法及びインデンターモジュラス法による測定及び熱重量測定を行い，ケーブル健全性評価試験におけるFR-EPDM絶縁体の高分子構造及び機械特性の変化を調べた。