トータルエンジンシミュレーションシステム用0次元ディーゼル燃焼モデルの総合的な精度向上（第2報）－噴霧干渉のモデル化に関する研究

摘要

さらに厳しさを増す排出ガス規制，燃費規制への適用のため，将来ディーゼル機関のシステムは複雑化の一途をたどっている．実機を用いた最適化は困難を極め，仕様選定，適合試験の一部代替，制御開発など多岐にわたり適用可能なシミュレーションツールの活用が不可欠となっている．そこで著者らは後処理を含めたエンジンシステム全体を対象とし，燃費および排出ガスを比較的高精度にかつリアルタイムに近い計算速度で予測可能なトータルエンジンシミュレーションシステム（TESS）を構築した．精度と速度の両立のために鍵となる燃焼モデルには廣安らにより開発された現象論に基づく0次元マルチゾーン燃焼モデルHIDECS （Hiroshima University Diesel Engine Combustion Simulation）を採用した．前報では燃焼モデルの精度向上を目的に熱損失筒内流動，乱流，Sootモデルの改良を実施し，複数の排気量，運転条件において熱発生率形状，正味燃料消費率（BSFC）およびNO排出濃度が比較的良好に予測可能であることを確認した．本報では，噴霧パッケージの位置情報に応じて空気導入特性を変化させることで，高負荷時および多段噴射時の噴霧干渉の影響をモデル化し，燃費およびエミッションの予測精度に及ぼす影響を調査した結果について報告する．