セイフティクッション：走行環境文脈と運転行動状態に基づく危険度推定モデルの構築（第二報）

摘要

死角からの歩行者（または自転車に乗る者）の無謀な飛び出しは脅威の一つである．脅威が出現したならば，事故冋避を図るうえで，運転者に残された時間余裕は数秒しかない．現在，前方の障害物との衝突可能性が極めて高い緊急時に作動する衝突被害軽減のための自動ブレーキの機能は，事故回避のうえで必要なものとして社会に受容されている．「歩行者の無謀な飛び出し」という脅威の出現に対して，人の対応が間に合わない時間余裕であっても，機械の迅速·強力な対応のもとにおいて事故回避が可能なことがある．しかしながら，このブレーキの機能も万全ではなく，機械の情報獲得·分析の機能の限界から期待された能力を十分に発揮できるとは限らない．一方，熟練した運転者は，歩行者の飛び出しに備え，あらかじめ速度を下げるなどの危険予測に基づく先読み運転を実施する．「まさかの事態」に遭遇することは極めて稀であり，その状況は多岐に渡るが，熟練運転者は，状況に応じて柔軟に状態推移の予見と適切な行為の選択を行うことで事故リスクを動的にマネジメントしているとみなせる．