射出成形カーボン·ガラスハイブリッド複合材料の疲労寿命とその異方性

摘要

炭素繊維強化プラスチック（Carbon Fiber Reinforced Plastics: CFRP)は，金属材料に比べて軽量かつ高強度·高剛性を有することから，航空宇宙機器分野だけでなく，一般輸送機器分野やエネルギ構造分野などにおいても用途が拡大している.連続炭素繊維と熱硬化性樹脂を用いたCFRPは，製造コストが高く，成形時間も長くなることから，多品種大量生産部品への応用には必ずしも適さない.これに対して，母材に熱可塑性樹脂，強化繊維に不連続炭素繊維を用いた不連続炭素織維強化熱可塑性樹脂複合材料(CFRTP)は，高性能でありながら,高い成形自由度を有し，低コスト化にも貢献する.さらにメンテナンス性やリサイクル性も高い.CFRTPは，多品種·大量生産部品への適用要件を満たすことから，一般輸送機器分野において広範な応用に期待が寄せられている.本研究では，CFRTP射出成形板から射出方向（0°材），射出方向から45°傾いた方向（45°材）および90°傾いた方向（90°材）に切り出した試験片のそれぞれについて，静的強度と疲労強度を調べる.さらに，それらの温度依存性も同定する.まず,3種類の試験片に対して異なる温度(室温,80°C, 120°C)で静的引張試験と静的圧縮試験を行い，静的強度の方位依存性と温度依存性を評価する.次に，3種類の試験片に対して異なる応力比（R = 0.1,10, χ)による定常疲労試験を異なる温度について行い，S-N関係の応力比依存性，方位依存性，および温度依存性を明らかにする.最後に，CFRTPに適した等寿命線図法について議論する.