ニアミス再現実験による車両対歩行者事故の防止方策に関する研究－注意喚起情報の提供タイミングが横断歩行者の認知能力に及ぼす影響

摘要

人対車両事故（以下，「対歩行者事故」）は，国内では最も死亡事故の多い事故類型であり，平成21年中に発生した死亡事故全体の約3割を占めており，早急な事故要因解明と対策が必要である．事故統計分析によると，対歩行者事故の多くは，運転者による歩行者認知遅れ（発見エラー）が原因であるとされている．近年，ドライブレコーダで得られたニアミス状況を実験的に設定し，歩行者認知遅れの発生を再現検証できるようになりつつある．このような，実証実験的な取り組みは，具体的な対策のあり方を検討する上でも有益と考えられる．そこで本研究では，交差点右折時の対歩行者事故防止対策を念頭に，ニアミスデータによる事故の背景要因分析に基づいて事故防止の対策アプローチを検討した．その上で，模擬市街路での典型的な対歩行者事故シナリオの再現実験により，車両側からの事故防止対策を具体化する際の留意点を検討した．