GISデータを用いた都市内における日射量分布解析－その2 オフィスビルの日射受熱量分布が暖冷房負荷に与える影響

摘要

建築物の省エネルギー化を実現するため，PVや太陽熱集熱装置などを用いた日射利用技術が注目されている．また，ダブルスキンやブラインド自動制御などの日射遮蔽対策や，ダイレクトゲイン等の日射を積極的に制御して省エネに寄与しようとする技術の導入例も増加している．しかしどの技術も実際の運用時にどの程度日射取得が可能なのかを検討している例は少なく，現行の熱負荷計算で用いられている日射受熱量に関しても，外部環境の影響(周辺建物の影や階層など)は考慮されていない．その原因の一つに都市の形状を再現することの難しさがあるが，近年では2007年に地理空間情報活用推進基本法が制定され，GISデータやGPSの環境整備が進められてきている．特にGISに関しては国土地理院が基盤地図情報を整備し，測量の基準点や軌道の中心線，建築物の外周線等は都市計画区域内においては2.5m以内の誤差で提供されている．そこで本研究では，GISデータとRadianceを用いて都市形状を再現し，周辺状況を考慮した日射量分布解析を実施した．その結果を用いて本研究では，①都市形状を考慮したオフィスビルの日射受熱量分布解析，②現行の最大熱負荷計算に用いられる，方位別，時系別の日射受熱量の補正，③都市形状によって変化する日射分布がオフィスビルの空調負荷に与える影響の把握，以上3つの目標の実現を目指している．