中温域プロトン導電型燃料電池用ZrO_2-1.6P_2O_5 コンポジットZnO-2P_2O_5 ガラス電解質の特性

摘要

近年注目されている固体高分子形燃料電池(PEFC) などの低温型の燃料電池には，高分子電解質や触媒として用いられるPt が高コストであることや，メタンを水蒸気改質することによって得られる水素ガスに含まれる微量の一酸化炭素によってPt 触媒が被毒されて発電性能が低下してしまうといった問題がある。また，排熱(最高でも100°C)の利用価値が低い。一方，炭酸溶融塩形燃料電池(MCFC)や固体酸化形燃料電池(SOFC)などの高温型の燃料電池では，高温での稼働に耐えることができる材料が限定されることや高速および頻繁な起動停止が困難であるといった問題がある。そして，これらの問題点を一度に解決できる手段として中温作動燃料電池(Intermediate Temperature Fuel Cell, ITFC)が注目されている。当研究室では75～250°C の温度域において比較的高いプロトン導電性(10~(-1.0)～10~(-1.5) S cm~(-1))を有するZrO_2-1.6P_2O_5 電解質の開発に成功した。しかしZrO_2-1.6P_2O_5 電解質は耐水性に乏しく，機械的強度が弱いため，高加湿条件下での使用や薄膜化が困難であった。本研究ではプロトン伝導性を有するリン酸ガラスZnO-2P_2O_5に，ZrO_2-1.6P_2O_5 電解質を複合化することで，耐水性および水素ガスバリア性に優れた新規無機-無機複合電解質を合成することを目的とした。