食品産業における低温熱需要への太陽熱エネルギーの導入可能性― その1 研究の概要と醤油·ソース類製造工場における検討事例

摘要

住宅における太陽熱利用では、現時点での普及への障害は主として経済的な問題で、基本的な技術はおおむね確立されている。一方、産業用途の太陽熱温水利用に目を向けると、基本的な技術は住宅用に類似しているにも関わらず、導入事例は非常に少ない。太陽熱利用に適する温水需要として、①比較的低温（50～80°C程度。本論文では100°C未満を指す）の要求温度であること、②負荷発生時間が日中に偏重していること、の2 点が高いエネルギー効率を実現でき、経済的にも有利と考えられる。そこで、幅広い産業用熱需要の中から、これらの条件に合致するものを抽出し、太陽熱導入ポテンシャルの検討を行っていくことが本研究の主目的である。真空管集熱器や集光型集熱器を用いると、100°C以上の熱供給も可能だが、検討の導入段階としては、初期コストやシステムの複雑さを鑑みても、平板型集熱器を用いた低温水負荷の太陽熱導入ポテンシャルが高いと考えられる。そこで本検討では、食品業界での低温水負荷にターゲットを絞り、太陽熱利用システムの導入可能性を明らかにしていくことを目的とする。