射出成形プラスチックフレームのビス穴検査システムにおける判別閾値自動決定法の改良を目的とした各ビス穴画素数の解析

摘要

射出成形によるプラスチックフレーム（以降，PF と略記）の成形時，金型の破損により，ビス穴が正常に成形されない場合がある(図1 参照)．現在,ビス穴が正常に成形されていない不良品を発見する手段として，人手による抜取検査が目視で行われているが，不良品の見落としが発生している．この問題を解決するため，著者は画像処理による成形PF ビス穴検査システムの研究を行っている．本システムによる検査を行うには，正常ビス穴および異常ビス穴を判別するための判別閾値を決定する必要がある．この判別閾値は， 大量に撮像したPF 内に成形されるビス穴の周辺画像(以降，サンプルと略記)からビス穴内部に対応する画素数のヒストグラムを作成し，統計的に決定しなければならない．過去の研究において，判別閾値自動決定法の有効性検証実験を行ったが,一部のビス穴において判別閾値自動決定法に用いるサンプル数が少なかったため、適切な判別閾値が決定できなかったと考えられた．そこで，サンプル数を段階的に増加させ,有効性検証実験を行った結果，サンプル数と有効な判別閾値の間には相関関係がないことが判明した．そのため，判別閾値自動決定法に使用する各ビス穴画素数の分布形に相違があったのではないかと考えた．そこで,著者らは正規母集団における母標準偏差の不偏推定量を用いた統計的手法による判別閾値自動決定法の開発を行ってきた．本論文では，過去の実験から得られた各ビス穴の画素数のデータ解析を行い，判別閾値自動決定法により決定した判別閾値が有効であったビス穴と有効でなかったビス穴のデータ分布形としての相違点を明らかにする．