Localization of cell body of cultured neuronon high density CMOS array

摘要

脳には記憶や学習といった高次機能があり,それらの機能は脳を構成する神経ネットワークの可塑性によってもたらされている．そのような可塑性を研究するために,微小電極アレイ上に分散培養された神経細胞ネットワークが用いられている．著者らは,高密度CMOS アレイ上に神経ネットワークを分散培養することで,高い時空間分解能で活動パターンを計測し,同パターンから神経ネットワークを推定することを試みてきた．なお,CMOS アレイは,約2×2 mm~2 におよそ1万個の電極を有し,個々の細胞体での活動電位を精度良く計測できる．これまでに,著者らは,各神経細胞から計測された発火系列から,相互相関や相互情報量に基づいて,統計的に細胞間の結合を推定してきた．しかし,このようにして推定された結合の妥当性は生理学的に検証されていない．そこで,高密度CMOS アレイ上の任意の細胞に対し,細胞内電気刺激を与え,その刺激で誘発される神経活動パターンを調べれば,細胞間の機能結合を生理学的に明らかにできる可能性がある．そのためには,任意の細胞に,微小電極を刺入する必要がある．しかし,CMOS アレイは光を透過しないため,通常の光学顕微鏡では細胞を観察することができず,微小電極を特定の細胞体へと誘導できない．そこで,本研究では,光学顕微鏡を使用せず,刺激電極を細胞まで誘導する方法を検討する．具体的には,刺激用の微小電極から培地に対して通電し,それにより生じた電位の空間分布をCMOS アレイで観測し,微小電極の位置を同定する．更に,神経細胞の活動電位の空間的な分布から細胞体位置を同定する．これら刺激電極と細胞体の位置について,刺激電極は印加電圧や針先の高さと空間分解能の関係を評価し,細胞体は活動電位の空間的な分布と染色による細胞位置を比較した．