片麻痺者の歩行リハビリテーションにおけるFES による随意背屈誘発補助の基礎的検討

摘要

脳卒中や脊髄損傷により中枢神経系が損傷を受けると脳からの指令が末梢神経まで伝達されなくなり、身体に麻痺が生じる。しかし末梢の神経や筋が興奮性を維持していれば、外部から適切な電気刺激を与えることで筋が収縮し、運動機能を再建することが可能である。これを機能的電気刺激（Functional Electrical Stimulation; FES）と呼ぶ。FES は、中枢性の運動機能麻痺に対する動作の補助?再建において臨床的に研究が進められてきたが、一方で、脳卒中患者や脊髄損傷患者のリハビリテーションにおける治療方法の一つとしてFES を用いた方法も古くから検討されている[1-4]。例えば下肢の運動機能に着目すると、歩行中の下垂足を是正するために足関節の背屈を促すFES を行うことで、歩容を改善させる効果がある[3-4]。しかし、このようなFES リハビリテーションでは強制的な背屈運動となるので、脳からの指令と無関係に受動的に運動が行われることになる。これに対し、随意的な運動をFES と合わせて行う方法が検討されており、近年では、リハビリテーションの効果が上昇することが脳や神経系の働きから確認されている[5-6]。そこで本研究では、電気刺激で動作を完全に補助するのではなく、弱い電気刺激により動作を行うタイミングを提示することで随意動作を誘発することを主眼とし、リハビリテーション訓練を行う方法に着目した。本報告では片麻痺者の下垂足の改善を対象に、FES により足関節背屈を制御した場合、閾値程度の電気刺激に合わせて随意動作を行った場合について、下肢動作の変化を計測し、閾値程度の電気刺激による随意動作誘発の可能性、ならびに、FES によるリハビリテーション手法への応用可能性について検討した。