ラバーハンド錯覚における視覚情報の違いが錯覚感度に及ぼす影響に関する研究

摘要

機械やロボットに対し，人間が日常的に行うような自分で判断し行動することが期待されているが，その実現は難しい．この問題の要因の一つには，人間の知覚メカニズムが明らかでないことが挙げられる．近年，錯覚現象を研究対象とすることにより，人間の知覚メカニズムを解明が行われている[1][2]．このような研究背景がある中で，これまでの研究において，目隠しラバーハンド錯覚を研究対象とし，現象を行う際に実験条件を変えた際に，錯覚の感度に影響が生じるか検証を行ってきた[3]．目隠しラバーハンド錯覚について説明する．被験者は目隠しをし，右手は人差し指を立てた状態でほかの指を握り，左手は手の甲が上を向くように机の上に置く．実験者は被験者の右手人差し指を動かしてラバーハンドをたたくと同時に，被験者の左手をたたく．これを持続して続けていると，被験者は自分の指で自分の手をたたいているような錯覚を覚えるという．このように自分で自分を触っているように感じる現象は，適切な視覚情報を与えた際にも生じることが明らかとなっている[4]．本稿では，上記のような錯覚を感じているとき，人間の意識状態を調べるために，セルフタッチのラバーハンド錯覚において視覚情報の与え方を変化させることにより，この解明を行った．