腸管短縮支援のための大腸内視鏡装着型マニピュレータの開発

摘要

近年，高齢者数の増加や食生活の欧米化など環境因子の変化により大腸がhの患者数は年々増加し，わが国の癌死因の上位となっている．しかし，大腸がhは早期に発見し治療をおこなえば予後は良好である．そのため大腸内視鏡検査などの検診による二次予防に対する期待は大きい．大腸内視鏡検査とは，長さ約1.30[m]，太さ約10[mm]の軟性内視鏡を肛門から挿入し，大腸を蛇腹のようにたたみ込みながら，盲腸まで挿入する検査である．しかし大腸には，長く，弯曲部と結腸ひだがあるという特徴があるため，医師の熟練度によって検査の可否が大きく左右される．また見落としが多いこと，痛みを伴い穿孔·出血などの偶発症を発症する恐れがあることなど問題が多い[1]．これらの問題を解決するために，小腸まで挿入可能なダブルバルーン内視鏡とカプセル内視鏡が開発されてきた[2][3]．しかし，ダブルバルーン内視鏡は従来の内視鏡と同様に，使用する医師の技能が必要不可欠であり，カプセル内視鏡は小腸内に残留する危険性や病変を見逃す可能性がある[4]．そこで本研究では，より低侵襲かつ容易に挿入可能な大腸内視鏡デバイスの開発を目的とする．これにより，今まで検査を受けることをためらっていた多くの人々を，気軽に，かつ慣習的に大腸検査へと向かわせることが可能となり，大腸がhの早期発見に大きく貢献できるものと考えている．