Nafion 膜内の水素ガス溶解度および拡散係数のNMR 法によるその場計測

摘要

水素エネルギー社会において，陽イオン交換膜(PEM)は高分子電解質形燃料電池や水電解などさまざまに用途で用いられている．そのため多くの研究，開発がなされているがいまだいくつかの課題が残されている．その中でも本研究ではPEM へのガス透過(クロスリーク)に着目している．クロスリークが起きると，燃料電池や水電解の効率を低下させるだけでなく，それによって生じる過酸化水素は膜の劣化に要因になるといわれている．そのためガス透過性，特に分子の小さい水素ガスの透過性を把握する必要があるが，従来の方法では，PEM に差圧をかけて透過量を計測するのみだった．しかしこれでは溶解度や拡散係数の計測には輸送モデルを必要とし、透過性を十分に議論できない．そこで本研究ではその場で計測でき，輸送モデルを仮定しない方法で，PEM 内の水素ガス透過性を計測する手法を開発したので報告する．これは核磁気共鳴(NMR)原理を使った手法で，大気圧から0.7MPa までの水素ガス雰囲気下で試料に対する水素溶解度，拡散係数をその場で直接計測できる．以下に計測手法，結果を示す．