超高温ガス炉技術開発に関する熱流動研究の現状

摘要

現在，世界の12カ国1機関により構成される第四世代原子力システム国際フォーラム（Generation IV International Forum, GIF）において，次世代の原子力システムに関する国際共同研究が進められようとしている．そこでは，6つの原子力システムが採択されているが，そのうちの一つである超高温ガス炉（Very-High-Temperature Reactor, VHTR）システムは，ガスタービンにより電気を発生させるとともに水と核熱により熱化学法や電気化学法等を利用して水素を発生させることが可能である電力水素併産システムである．一般に，高温ガス炉は，燃料被覆材にセラミックス，炉心構造材に黒鉛を用いていることから，万一事故が起きても炉心が溶融することはなく，さらに炉心の熱容量が大きいため，異常が発生して出力が急上昇しても，炉心温度の変化は極めて緩慢であり，原子炉圧力容器の表面から自然放熱により炉心の残留熱を受動的に除去することが可能である．すなわち，一次系の冷却材流量が喪失してしまうような減圧事故に対しても，直ちに強制冷却する必要は無く，高温の炉心から原子炉圧力容器への熱伝導及び圧力容器表面からの自然対流による伝熱等で原子炉の残留熱の除去が可能である．このGIFの枠組みでは，現在，VHTRシステムに関する国際共同研究として，VHTR燃料，材料，水素製造技術や計算手法検証等の研究プロジェクトが進められようとしている．