生体の熱伝導率，熱拡散率の非侵襲測定法―寒天を用いた測定法の検討

摘要

温熱療法や凍結手術などの医療においては，治療に応じた加熱または冷却過程のシミュレーションに基づき，治療のプロトコルを予め決めておくことができれば，治療の精度を上げられる．しかし，その際には，治療部位の熱物性値の正確さがシミュレーションの精度を左右することになる．著者らはレーザで加熱された表面の温度を赤外線温度計により非接触で測定し，熱伝導率と熱拡散率を同時に測定する方法の開発を行っている．主に工業用材料を対象としたこの方法を生体材料に対して適用するため，これまでに加熱用レーザを初めとした実験装置の改良，レーザ光の試料内吸収や周囲への熱損失を考慮した理論モデルの変更，および熱物性値算出の際の計算法の改良を行った．そして数値実験により本測定法の測定精度の検討を行った．しかし予備実験として寒天を試料として測定を行ったところ，その主成分である水の熱伝導率，熱拡散率よりそれぞれ33%，20%高い値が得られた．そこで本研究では引き続き寒天を試料として，その吸収係数を測定するとともに，短細線加熱法でも測定を行って本測定法の検討を行った．