バス事業者における全運行バスの段階的な電動化を考慮した充電スケジュール最適化によるPV 地産地消への貢献能力評価

摘要

近年，脱炭素化社会の実現に向けて電気自動車（EV：Electric Vehicle）などのモビリティの電化が全世界で注目されている。実際に，国際エネルギー機関（IEA: InternationalEnergy Agency）(1)は2030 年までに電動車のマーケットシェアが全自動車の30%になるシナリオを提示している。これらのモビリティはエネルギーを配電系統からEV 充電器を通して得る。つまり，電力ネットワークと交通ネットワークがEV 充電器を通じて影響を及ぼしあう関係になると考えられる。その状況下での交通ネットワークの課題は，再生可能エネルギー（以下，再エネ）を有効活用して使用電力のCO2排出量を下げ，ライフサイクル全体で脱炭素化を実現することである(2)。一方，電力ネットワークでは再エネの太陽光発電（PV: Photovoltaic）の普及が拡大しており，一部地域ではPV 余剰電力が配電用変電所規模で逆潮流を生じる可能性がある。この余剰電力に関して，地域内の再エネ利用率最大化の環境政策的視点から，自治体が中心となって再エネの地産地消(3)に取り組hでおり，それを実現するスマートシティ構想にはEV を動く蓄電池として活用しようとする例も存在する。このように，今後の脱炭素化スマートシティの実現に向け，社会インフラの各分野の境界を跨ったセクターカップリングの取り組みが注目され始めている。本研究は，電力セクターと交通セクターの実データを複合的に利用し，従来の分野個別最適化の概念に捉われず，セクターカップリングによる同時最適化の実現を目的としている。