高齢者に散歩を促す携帯型ロボットの開発: 深層強化学習による誘い方

摘要

近年の日本では総人口に対する65歳以上の高齢者の割合が増加傾向にあり2014年時点で総人口に対する高齢者の割合は26.0%，高齢者の人口は3,500万人である．それに伴い，高齢者の閉じこもりが社会問題となっている．これは単調な日常生活により身体活動が減少し，筋力の衰えから歩行が不自由になることなどが原因として挙げられる．この問題の対策例として，高齢者の心身の健康維持を目的とした外出を促すコミュニケーションロボットが提案されている．先行研究[3]では気温，天気，時間，効果的な促しの4つを教師データとしたニューラルネットワークを用いて高齢者一人ひとりに合ったアプローチを見出す研究が行われていた．しかしながらこの研究ではロボットが話す内容が誘い方のみしか注目していなかった．一方自然な外出の促しには会話の話段を増やす必要がある．先行研究で用いられていたニューラルネットワークには正解ラベル付きの訓練データが必要であるが用意するのが困難である．そこで本研究では正解ラベル付きの訓練データがなくても，アルゴリズムが自発的に学習を進めていく深層強化学習を用いることにした．近年人間の脳内でも強化学習が行われているかを調査した研究で，人間の脳の前部帯状皮質にはモチベーションや報酬などへの期待に重度な関与をしていることが分かっている．よって促しに対する『承諾』をプラスの報酬だと仮定した場合，促しから『承諾』までの過程は脳内で強化学習されているともみなせる．またその過程をロボットに学習させることで，利用者である人間がどのようなアプローチが好みなのかが見出せると考えられる．