医療応用に向けた高解像度MEMS触覚センサの防水・防塵パッケージ技術開発

摘要

人の指先は物に触ることで，100µm以下の微細な表面凹凸と100µN以下の摩擦力を検出することが可能であり，質感・風合いとして知覚することで触れた物を認識し生活の様々な場面に役立てている。外科手術などの医療分野においては，この皮膚感覚を用いて，医師が直接指で触れることで患部の状態を診断することができる。一方，内視鏡手術やロボット手術では，このような触診を行うことができず医師の手の代わりとなる『リモート触覚センシング技術』が強く求められている。触覚センサを手術環境へ適応する上で課題に挙がるのが，体液や洗浄液などの液体・塵に対する耐性である。これまでの触覚センサの中には耐水構造を持つものがある。しかし，これらのMEMS構造体はエラストマブロックの中に埋め込まれているため，その感度（〜mN）と空間分解能（0.5〜2mm）は医療用途への応用には不十分である。我々はこれまでに，微細な接触子と 2 軸変位センサを集積し空間分解能50µm，摩擦感度50µNの高分解能MEMS触覚センサを開発してきたが，脆弱な機械構造が露出しているため体液を含む組織などの湿った対象物への耐性が低いことが問題となっていた。本研究では，高分解能 MEMS 触覚センサの空間分解能と感度を維持したまま，防水・防塵性を実現する新しいパッケージ技術を開発し，模擬臓器の計測により医療応用への可能性を示すことに成功したので報告する。