カップ形状微小電極への細胞捕捉と電気化学発光計測による細胞表面発現分子検出技術の開発

摘要

細胞集団中から標的となる細胞を検出する場合、標的細胞表面にのみ発現するマーカー分子を指標とした検出方法がしばしば用いられる。例えば、血中循環がh細胞（CTC）の検出では、上皮細胞接着分子（EpCAM）など正常血球細胞は発現しておらずCTCでは発現していると考えられている細胞表面マーカー分子を蛍光抗体で標識して検出する方法が主流であるが、マーカー分子の発現量が低いCTCを見逃してしまう問題がある。そのため、EpCAMなどに加えて様々な種類のマーカー分子を併用して検出する方法が試されているが、がh細胞の多様性のため、如何なるマーカー分子セットを使用しても低発現CTCを見逃す可能性を排除できず、この問題を本質的に解決するには検出技術を高感度化する他ない。細胞表面分子検出で広く用いられる蛍光計測法の感度を凌駕する候補技術のひとつに、電気化学発光（ECL）計測法がある。ECL計測では励起光が不要であるため背景光ノイズを極限まで抑えられ高感度検出が達成されているが、一方でECLは一般に電極表面ごく近傍（数nm）でのみ生じるため、細胞（直径約10µm）のような大きな構造物の表面分子検出には不向きであった。