浅海域で使用可能なバーチャルモアリング用水中グライダーの開発: 模型と実機による水槽試験

摘要

近年環境変化の予測，環境保全に関する研究がますます重要になってきている．これらの研究を行うためには環境に大きな影響を及ぼす海洋の時間的・鉛直空間的な観測データの取得が必要であり，低コストでデータを取得することができる水中グライダーの開発や利用が盛hになってきている．しかし，これらのグライダーは深い海域での使用を想定した巡航型のグライダーで，一定海域に留まって（バーチャルモアリング）観測を続けるのに適しているとは言い難い．また，これまでは深い海域における観測データが重要視されてきていたが，最近では沿岸部の浅海域における海洋データの重要性がクローズアップされ，浅海域で使用可能なバーチャルモアリング用水中グライダーの開発が望まれている．バーチャルモアリング用水中グライダーは滑空により海面と海底を往復しながら海洋観測を続けるが，定点に留まるためには滑空方向を制御しなくてはならない．ところが通常の航空機タイプの水中グライダーが針路を変えるためには下降・上昇による旋回が必要なため，浅海域では目標方向に滑空を始める前に海底や海面に到達してしまい，定点に留まるための運動制御が非常に困難である．本研究ではこの問題点を解決し，浅海域で使用可能なバーチャルモアリング用水中グライダーを開発する．本論文には，バーチャルモアリングを想定して1/2スケールモデルを用いて実施された総合的な水槽試験結果，模型試験結果を基に改造された実機の運動制御性能を水槽試験により確認した結果が示されている．