学習時の集中度と姿勢・体動の関係の脳波計を用いた定量的調査

摘要

近年、公共の教育施設や家庭での学習場面において学習者の自律性を重視した教育が実施されており、自律学習を支援し学習者の知的活動を促進することの重要性が高まっている。これまで筆者らは、自律学習を支援するアンビエントな（人が働きかけなくてもそれによる恩恵がごく自然に受けられる）クッション型センシング・情報提示デバイスを提案し、その効果に対する評価を行ってきた。当システムは、ユーザと遠隔地にいる友人の間で、姿勢・体動情報から算出した学習集中度を共有することで生まれるつながり感を応用することで、自律学習を支援するものである。「人は集中すると前傾して動きが少なくなる」という経験則を元に学習集中度を推定し、推定結果の共有が自律学習に効果的であることを、小学生および大学生らの評価実験を通して確認した。しかし「人は集中すると前傾して動きが少なくなる」という経験則の妥当性を定量的に示した研究例は筆者らの知る限り例がない。そこで本稿では人の集中時の姿勢・体動と集中度の関係を、脳波計測を通して示すことを目的とする。以降、本稿の2章ではクッション型デバイスと集中度算出アルゴリズムを、3 章では脳波計による集中度の計測方法を述べる。4、5章では実施した体動と集中度の調査とその分析を述べ、6章を本稿の結びとする。