不完全かご型シルセスキオキサン誘導体の置換基変化による構造物性相関

摘要

現在、有機材料の加工性と無機材料の耐久性を併せ持つ有機無機ハイブリッド材料が注目されている。これは有機成分と無機成分をナノレベルで複合化したものであり、単に有機物と無機物を混ぜ合わせるだけでは有機無機界面を制御することが困難である。その中でかご型シルセスキオキサン(POSS)はケイ素と酸素からなる立方体型の無機骨格を有しながら各頂点への有機修飾が容易であることから、有機無機ハイブリッド材料のナノビルディングブロックとして様々な研究が行われている。しかしその一方で対称性の高さ故に位置選択的な置換基の導入が困難なことや、結晶性が高いために材料化への応用が制限されている面がある。そこでPOSS の頂点の一つが欠損した「不完全POSS」が注目を集めている。不完全POSS はPOSS と同様の耐熱性を有しながらもPOSS に比べ対称性や結晶性が低下している1)ため、不完全POSS を用いた分子設計はPOSS の弱点を克服した材料化への応用に繋がるとして期待される。POSS はその置換基によって物性が大きく変化するため、不完全POSS の置換基と物性の関係を明らかにすることは不完全POSS の特性を生かした応用を広げるうえで重要である。そこで本研究では置換基の異なる種々の不完全POSS 誘導体の合成を行い、それぞれの物性を評価、比較した。