かご型シルセスキオキサン（POSS）を主鎖に有するシロキサンボリマーによる樹脂の透明性と耐熱性，柔軟性との両立について

摘要

高分子の多くは炭素を主な骨格とする有機化合物であるが，炭素以外のものを骨格に持つものは無機高分子と呼ばれる。最近では∴撫機元素を含む高分子というやや広い定義でも用いられている。炭素以外の様々な元素を導入した高分子という意味合いから，元素ブロック高分子という言葉も一般化してきた。こうした無機高分子，元素ブロック高分子の代表的なものにシロキサン結合を主骨格とする有機ケイ素高分子化合物がある。ケイ素原子の4つの手全てをシロキサン結合にしたものが，ケイ酸ガラス（SiO2）nに当たる。4つの手のうち2つをメチル基で塞ぎ，残りの二つの手でつながったポリマーが，オイルやゴムの原料となるガラス転移温度の低い柔軟なポリジメチルシロキサン（Si（CH3）2O）nとして知られる。これらに対し，3つの手がシロキサン結合で繋がれたシルセスキオキサン（RSiO1.5）nは，秩序性の低いネットワークポリマーとなる一方で，かご型構造を有するPOlyhedral oligomeric silsesquioxane（POSS）分子のようなディスクリートで規則性の高い多面体クラスターも生じる。熱特性，力学特性，光学特性，誘電性などの特性を向上する目的で，POSS分子をナノフィラーとしてポリマー中に導入する研究が，有機·無機ハイブリッド材料開発として精力的に行われている。フィラー添加量に従って特性の向上が期待されるが，凝集に伴う特性低下の問題から，導入竃には自ずと限界がある。そこで，POSSなどのナノフィラー自身をポリマー構造デザインの中に積極的に取り込もうとする研究が盛んになってきている。