大学・短期大学の初年次教育における材料科学実験の開発: 熱電変換材料の合成とゼーベック係数の測定

摘要

理工系の大学・短期大学の初年次教育における物理学実験というと，多くは力学や熱力学，電磁気学をテーマとしたもので，放射線を扱うこともあるという印象が多い．しかし，物理学という分野はそれだけではなく，物性や材料を含むより広い範囲を学ぶ．高等学校の理科では，このように物質を扱う分野は化学の領域に含まれている．高等学校で学ぶ化学では，気体や液体を用いた化学反応が多く，固体同士の化学反応を扱うことは比較的少ない．そのため，気体や液体での反応で見られるような均質な状態ばかりを連想してしまい，固体に見られる「粒」という結晶構造と多結晶体の間にある構造体の概念の形成が十分なされていないと危惧される 1)．このことを考えると，物質の合成や評価（物性測定）を含めたテーマが必要であると考える．そこで，試料作成から評価までを1つの実験テーマとして導入した授業を行い，その結果を報告する．