朝鮮後期における天井の特殊技法:見せかけの扇垂木について

摘要

伝統木造建築において垂木は屋根の形を構成する構造部材であり、軒周りや内部空間に意匠的な機能を与える部材である。入母屋造や寄棟造、方形及び多角形屋根は隅木を用い、隅木の両側には垂木が設置される。その隅木に付く垂木構成によって平行垂木や扇垂木と区分する。韓国における伝統建築では扇垂木が一般的で、扇垂木の割り方を定める規矩術により扇子椽（ソンザヨン）と馬足椽（マゾクヨン）に区別できる。扇子椽は宮殿や役所、寺院、貴族住宅の中でも格の高い建築に用いられたもので、馬足椽は隅木が特に長い場合や相対的に格の低い建築や民家などに多く見られる。扇垂木において扇子椽のほうが格が高いという認識があったため、馬足椽を扇子椽のように見せる工夫をして馬足椽の下部に見せかけの扇垂木を設けることがある。本研究では、その見せかけの扇垂木に関して考察を行い、その特徴と意味を分析することが目的である。